庭付き一戸建てはサラリーマンの夢と言われるが、アメリカでは、建国以前から農場付き一戸建ての家が多くの人々の夢であった。Homestead Act of 1862 （1862年ホームステッド法）はそんなアメリカ人の夢をかなえた法律であった。21歳以上の世帯主であれば誰でも５年間定住して耕作しさえすれば、160エーカー（0.6平方キロ）の土地を無償で手に入れることができる。まさにアメリカン・ドリームを実現させる法律であった。1803年のルイジアナ買収以降、アメリカの領土は西へ西へと広がっていく。1845年にテキサスが合衆国に加わり、1846年のオレゴン条約で北の境界を北緯49度で確定するとともに、米墨戦争に勝利し、1848年にカリフォルニア、アリゾナ、ニューメキシコ、ネバダの西南部を獲得した。西部開拓を推進するため、この広大な土地をどう分配するかが問題となった。
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1800年にHarrisson Land Act（ハリソン土地法）が成立し、1エーカー当たり$2以上支払い320エーカー（1.2平方キロ）以上を購入するのであれば政府の土地を払い下げるという内容であった。1804年には、Land Act of 1804（1804年土地法）が成立し、この要件を緩和し、１エーカー当たり$1.64以上支払い160エーカー（0.6平方キロ）以上購入すればよいこととなった。しかし、多くの貧しい人々にはなお高値の花で不法占拠者や地主による買占めが跡を絶たなかった。これを是正するため、ミズーリー州選出のThomas Hart Benton（トーマス・ハート・ベントン）上院議員らの努力により、1841年にはPreemption Act of 1841（1841年先取り法）が成立し、当該土地を14ヶ月以上占拠している者には、払い下げの前に1エーカー当たり$1.25以上支払えば、160エーカー（0.6平方キロ）までの土地を所有できることとなった。まじめに働くものには土地をただで払い下げるべきとの考え方は、1825年にベントン上院議員により最初に唱えられたが、後に大統領となるAndrew Johnson（アンドリュー・ジョンソン）下院議員らにより1840年代には大きな声となっていったが、南部諸州は多くの黒人自作農が創出され、プランテーション経営が成り立たなくなることを恐れて、これに反対した。
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南北戦争の勃発により、南部諸州が連邦政府を離脱して、無償払い下げが実現するチャンスが生まれた。George Henry Evans（ジョージ・ヘンリー・エバンズ）、Horace Greeley（ホーラス・グリーリー）、アンドリュー・ジョンソン議員らの努力により、1862年に先述の1862年ホームステッド法が議会で成立し、リンカーン大統領の署名により1863年1月1日に発効することとなった。
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南北戦争の終了後、自作農となるため、多くの人々がこの法律の適用を求め申請ラッシュとなった。これに鉄道会社から勧誘を受けて、ヨーロッパから大量の移民が移住をしてきた。プロモーターの宣伝を信じて多くの人がプレーリーに移住してきたが、現実は生易しくなかった。肥沃な土地はすでに他人の所有となっており、ホームステッダーたちは、土壁の掘っ立て小屋に住み、プレーリーの乾燥した気候の厳しい土地を開墾することを余儀なくされた。収穫を前にたびたびいなごの被害にもあった。プレーリーは竜巻のメッカでもある。放牧を行うカウボーイとしばし紛争となった。ホームステッダーたちが自分の土地を守るた� �に発明したのがbarbed wire（有刺鉄線）であった。多くの人が失意のうちに土地を去ったが、また多くの人が耕作器具の改良、風車式井戸による水の確保、旱魃に強い新種の導入など絶え間ない努力を続けた結果、プレーリーは、今ではアメリカの穀倉地帯となっている。
ホームステッド法はその後の改正はあったが、1986年まで適用され、その間、200万人の人々が申請を行い、およそ2.7億エーカー、アメリカ全土の8％に当たる土地がこの法律により払い下げられた。 最初の申請者はDaniel Freeman（ダニエル・フリーマン）とされる。フリーマンは、ネブラスカ南東のBeatrice（ビートリス）郊外の土地について、1月1日の0時10分に、1862年ホームステッド法の適用を申請した。その後も5年間、農場を経営し、1862年ホームステッド法下で最初に土地を手に入れている。1974年にKenneth Deardorff（ケネス・ディアドロフ）がアラスカの80エーカーの土地を申請したのが最後のケースとなった。
フリーマンの農場のあった場所に、Homestead National Monument of America（アメリカ・ホームステッド国立遺跡）が設置されている。残念ながら彼の家は残っていない。近くで1867年に建てられたPalmer-Epard Cabin（パーマー/エパード小屋）がビジターセンター裏に移設され、展示されている。
ホームステッド法は、アメリカ中西部の風景を変えた。バッファローがさすらう草原は、世界有数の穀倉地に生まれ変わった。この法律がなければ、今の農業大国アメリカはなかったかもしれないし、「大草原の小さな家」も書かれることはなかったかもしれない。
（国立公園局のHP）
（国立公園局の地図）PDFです。
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